2007年TVアニメ感想総評
結果発表

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さて……これより結果発表なのですが……。
すいません、あらかじめネタバレしておきます、
大変なことになってしまいました。
いつかこんな日がくるんじゃないかとは思っていたのだが、
まさか……まさかこれほどまでとは……!!

と、ともかく結果です。最初は20位から……と言いたいところですが、
19位からです。何故かは見ればわかります。

同点19位 天保異聞妖奇士(9点)
同点19位 武装錬金(9点)
同点19位 ヒロイック・エイジ(9点)
同点19位 瀬戸の花嫁(9点)
同点19位 DARKER THAN BLAK黒の契約者(9点)
同点19位 アイドルマスターXENOGLOSSIA(9点)
同点19位 もえたん(9点)
同点19位 モノノ怪(9点)

見よ!! このグダグダなランキング!!!!
今までもこの辺は同点が連発してしまうのは常だったが、この有様は何だ!?
つまり何が悪いのかというと、9点で19位になってしまう状態が悪いのである。
例年ならばトップ20には最低二桁取っていないと入れないのだが、
今回は9点で入ってしまった。それがこの状況を生んでいると。
上位陣がどれだけ根こそぎ点を取っていってしまったのかがわかる……。
一応、19位作品を総括すると、どれも非常に丁寧な作りであるうえに、
独自の魅力もちゃんとある。にもかかわらずあと一歩突き抜けきらなかった。
見事にそういう作品ばかりが並んでいて、
この八作品が同点になったこと自体はあながち間違ってはいないと思う。

さて、次は18位……と言いたいところですが、
何と13位なのだ!! もう本当にどうしようもないのだ!!

同点13位 牙-KIBA-(10点)
同点13位 がくえんゆーとぴあ まなびストレート!(10点)
同点13位 バッカーノ!(10点)
同点13位 Myself;Yourself(10点)
同点13位 みなみけ(10点)
同点13位 デルトラクエスト・一年目(10点)

誓って言うが、わざとやってるわけじゃない。
同じ10点といっても部門賞1位を取って10点なのは
みなみけとデルトラだけなわけで、あとは合計で偶然10点になっている。
これも本来10点で13位〜18位を占めてしまのがおかしいのだが、
それでも作品一つ一つを見れば、順位に相応しい内容ではあった。
4クールの物語を的確にまとめ切った牙とデルトラ、
日曜深夜の萌えアニメという同ジャンルでありながら
真逆の方向性を見せたまなびとみなみけ。
ハルヒが築いた原作再構成手法をより過激に推し進めたバッカーノ!。
そして原作やキャッチコピーであったハートフルラブストーリーすらも
ないがしろにしてあらぬ道を突っ走ってしまったマイユア。
どれも欠点はあれど魅力的な作品だった。

そして、次こそは12位……と言いたいところですが!!
11位になってしまうのですよ、ええ。

同点11位 魔法少女リリカルなのはStrikerS(12点)
同点11位 さよなら絶望先生(12点)

この二つは作品の出来はともかく話題性で売れてしまったような印象が強い。
なのはSSは内容自体は展開遅いわ作画微妙だわで色々大変だったのに、
なのは成長やなのは魔王化やスバル勇者王化やクアットロ大暴れで
何だかんだで話題をさらっていってしまったのがズルかった……。
絶望先生は、シャフトとの相性は抜群で出来自体は良かったのだが、
基本的に原作に忠実な作りでもっとはっちゃける余地はあったのにと
多少勿体ない気分になる。ひだまりやefがあれだけやっていたのに、
まさにそういう演出にうってつけな絶望先生で保守に入らなくても……。
しかし、両者とも固定ファンを満足させるという点では
優秀なソフトだったのかも知れない。

さて、ベスト10突入。今度こそ単独10位の発表です。

10位 RED GARDEN(16点)

松尾衝監督の野心作、レッドガーデンがここにランクイン。
プレスコによる活き活きとした声優達の演技、
独特の絵柄によるポップかつ退廃的な雰囲気の構築、
残酷な現実に向かい合う少女達の心のドラマを描いたストーリー、
どれも作品作りに対する強いこだわりと決意が感じられるもので、
TVアニメ作品としては実に挑戦的で力強い内容だった。
GONZOは定期的にこういう実験作を出してくれるのが
偉いところだったのだが、業績不振やら何やらあって、
そういうGONZO実験作の系譜もこの作品を最後に途絶えるかも知れない。
その点においても貴重な作品になってしまった。
しかし……10位で16点しか取れていないとは、
07年は本当に格差が激しい。

続いては9位。これも単独です。

9位 精霊の守り人(17点)

攻殻機動隊SACの神山健治監督以下スタッフが、
アジアンファンタジーに挑んだ注目作が9位。
とにかくプロダクションIGの本気が窺える作画が目立っているが、
それに加えて脚本の作り込み、音響へのこだわりも凄かった。
ファンタジーという作品の特徴と自然溢れる舞台設定のせいもあるが、
何だかずっと押井守の影を追っていた神山健治はじめIGスタッフが、
ようやくその呪縛から解放されて新しい地平に飛び出したといった
若々しい印象があったのが興味深かったなぁ。
まだ若いんだよね、IGも神山監督も。
イノセンスが現代アニメの究極なんて言わせてちゃ駄目だって!!

そして8位――。

8位 銀魂・07年放映ぶん(18点)

放送中作品から銀魂がランクイン。
07年に放送されたのは主に二年目だが、
それはまさに銀魂という作品が充実し爆発した時期だった。
ゴールデンを追われ、夕方に戦場を移してからというもの
怖いもの知らずにもほどがある大暴れの連続!!
モザイク!! パロディ!! フォーマットいじり!!
どこまでもエスカレートを続ける悪ノリで視聴者を戦慄させまくる。
そして、その一方でシリアスな話も見事にこなすのが銀魂の強み。
07年は紅桜編・芙蓉編・柳生編という重要なエピソードが連発し、
ギャグとシリアスのバランスも絶妙だった。
TVアニメの一つの方向性を示すうえでも面白い存在だったと思う。
ともかく、偉い人に怒られて打ち切り食らわず
08年も頑張り続けてくれることを願う……。

では今度は7位の発表――。

7位 ef - a tale of memories.(26点)

ここ数年、常にTVアニメ界に新たな風を吹かせてきたシャフトが、
新房昭之を監修に下げ、大沼心を初監督として作り上げたefが7位。
これはまさに、シャフトアニメの歴史の集大成にして新時代を象徴するような作品。
あまりにもアヴァンギャルドで突っ走り過ぎなのだが、
それくらいでなければシャフトじゃないという自負のようなものを感じる。
この作品に関しては、単独ではなくこれまでのシャフトの歴史を
全部ひっくるめてその先にこれが存在するのだという風に考えた方が
より美しい流れが見えてくるし納得もしやすいかと思う。
07年だけでも、ネギま!?→ひだまり→絶望先生→efというラインが描けるわけで、
本当に一作一作レベルアップしているのが見えてそれだけでも感動。
また、美少女ゲーム原作という側面から考えても、
メタ的にそれらを解体していくような視点が非常に現代的で、
07年的な思想認識を語るうえでは外せない。
特に千尋の話はリセット問題と美少女所有願望に対する斬り口が
なかなか容赦なくて面白かった。結末がベタ甘ラブコメなのは何だけど。
あとはヤンデレ視点での語りもあるし、
新海誠的な映像美をいかにTVアニメに落とし込むかという
ここ数年ずっと挑戦されてきた背景描写への一つの解答もある。
というわけで、注目点には事欠かない作品なのだが、
それゆえに他のシャフト作品と比べると各段に取っつきは悪かったかも知れない。

さてさて、いよいよ終盤、6位の発表です。

6位 おおきく振りかぶって(28点)

野球マンガの新たなスタンダードとなった原作を、
水島努がA-1 Picturesという新興スタジオとともに
見事にアニメ化した作品が6位に。
この作品、とにかく完成度が異常に高かった。
黒田洋介による原作の旨味を逃さないシリーズ構成に始まり、
総作監の吉田隆彦とは別にリアルな野球シーン描写の為に
アクション作監として谷口淳一郎を置きハイクオリティーな作画を実現。
更には「高校野球としてのリアリティ」を追及した音響の数々、
ブラバンでルパンやヤマトや狙い撃ちが流れることによる圧倒的高揚感!!
そして主演の代永翼、中村悠一をはじめとする溌剌とした声優陣。
正直、これほどまでに完璧なマンガ原作のアニメ化というのは
ほとんど例がないのではないか? それくらい異常な出来だった。
それにしても水島努。ハレグゥやドクロちゃんのような
スラップスティックを得意にしているのかと思えば、
xxxHOLiCや本作のような原作の魅力を最大限に引き出した
アニメ化も見事にこなしてしまう。一体何なんだその対応力は!?
当人は特に意識の切り替えもなく自然にやっているらしいのだが、
それがまた恐ろしい……。同年代の監督のなかでは、
水島精二や細田守や谷口悟朗などと比べて一歩遅れている印象があったが、
この作品を観る限りむしろ多種多様なTV・OVAシリーズをこなしたことが
良い方向に働いてきているのかも知れない。

さあ、ついに5位――と言いたいところですが!!
そうです、まだ終わっていないのです、同点地獄は!!
というわけで、同点4位二つの同時発表となります。

同点4位 School Days(40点)

同点4位 電脳コイル(40点)

スクイズとコイルが同点ですよっ!!!!
あり得ない!! というかあっちゃいけない、こんなことは。
TVアニメにおけるハイクオリティーの究極に達し
ストーリー的にもスタッフの情熱迸るコイルと、
TVアニメにおける表現規制の究極に達し、
ストーリー的にもスタッフの劣情迸るスクイズが……って、あれ?
いや、もしかして意外とこの二つが並ぶのって07年を象徴しているのか???
TVで何を流すべきなのかというメディア的問題意識、
TVでどこまでやれるのかという表現論的問題意識、
そしてアニメはどこまで突き進めるのかというジャンルとしての可能性。
07年、その限界に挑んでみせたのは確かにこの二作品なのだ、
方向性が清々しいまでに真逆であり、交わるところなど
何一つないようでありながら、しかし両者は現代性という糸で繋がっている。
07年、同じ時代にこの二作品が存在したのは恐らく偶然ではない。
ケータイに類する通信機器が重要なアイテムになっているのも偶然ではない。
たぶん、07年という場所にあったのはコミュニケーションを巡る命題であり、
スクイズはその極限における破綻をセンセーショナルに描いている。
そしてコイルはテクノロジーに頼ったコミュニケーションの限界と、
それでもテクノロジーなしでは繋がれない現代人の絶望と希望を描いている。
よくよく考えていくと、結構共通している、この二作品は。
正直、筆者もこの同点になるという事態が発生しなければ
スクイズとコイルの共通項なんて探さなかったと思うのだが、
何事もやってみるものだなぁ……。電脳メガネが誠くんに繋がったよ!!
こういうのがTVアニメを流れで観ていくという行為の面白さであり、
単品で視聴したのでは絶対に味わえない醍醐味ってやつなんだよなー。
まあ、強引な妄想で繋げただけだろという意見もあるだろうが、
妄想こそ感想の真実であり、批評が辿り着けない領域にワープする
唯一の力なのだとか言ってみたりする。

そして、ランキングはいよいよベスト3に突入です!!

ベスト3に突入です!!

ベスト3に――。

ええと、ですね。

改めて繰り返しますが、神に誓って偶然なのです。

同点1位 らき☆すた(46点)

同点1位 コードギアス
  反逆のルルーシュ(46点)

同点1位 天元突破
     グレンラガン(46点)

あるんだなぁ……こんなことって……。
あらかじめ07年を代表するに足るのはこの三作品(+コイル)であり、
点数的にもこの三作品が拮抗するであろうことは予想はしていた。
していたが、まさかそのまんま同点1位になるなんて
勿論まったく、何度だって繰り返すが筆者は意識してやっていない!!
点数数え間違えじゃないかと何度も計算をやり直したし、
ランキングにどこか無意識で手心を入れなかったかと再考もした。
しかし、一度こういう結果が出てからやり直したりなんかしたら、
それこそ邪念が入ってしまう。なので、この結果で確定。
06年の1位「涼宮ハルヒの憂鬱」が47点なので、
46点という点数はそれほど低いわけでもない。
それを三作品が一斉に取っているのだから、そりゃあ下の方は
点数不足で団子状態になるわけだ……。

ともかく、せっかくなので4位と同じように三作品が同点になったのは
偶然ではないという妄想の元に共通項を探ってみよう。

華やかさ、キャラの魅力、話題に事欠かない仕掛けの連続、
売れる為にやれることは全てやるといった覚悟、
そしてオタク文化に対する親和性の高さ……といった要素は、
今更上げるまでもない。問題はこの三作品が目指す「アニメの形」だ。
らきすたが目指したのは適度な刺激とまったりと平和な日常に囲まれた
一種の理想郷としてのアニメ空間。
コードギアスが目指したのは絶え間ない刺激と世界が激変していく
ダイナミズムに溢れたエンターテイメントとしてのアニメ空間。
グレンラガンが目指したのは懐かしい刺激と新たな刺激が交錯する
ノスタルジックでありながら未来に向かう活力の場としてのアニメ空間。
無理矢理に言えば、「今を癒す」のがらきすた、
「今を壊す」のがコードギアス、「今を生きる」のがグレンラガン。
これらは当然、どれが優れていてどれが劣っているということはない。
三者三様、それぞれに意義があり効果があり、
実際にアニメファンはそれら三つを使い分けるように消費している。
07年という時代にこの三作品が現れたことには、
やはり色々と意味はあるのだろうと思う。
07年のアニメファンが求めたものはこの現代というものに対する
姿勢の在り方そのものであり、その選択肢として三作品は機能したのではないか?
これからのアニメと、時代と、世界と、どう向き合っていけば良いのか。
その答えを探る意思をこの三作品は持ち合わせていた、
姿形も何もかも違うようでありながら、
この三作品は同じ「TVアニメ」として同じ時代に誕生した。
それは奇蹟のようだが、必然。
求められて、生み出された、それだけなのに違いない。

……とまあ、そんなようなことを書いてみたは良いが、やっぱり強引か。
ただ、この三作品が07年を代表するということに関しては、
本当に面白いと思う。TVアニメの今が全てここにある。
燃えと萌え、京アニ作画とガイナックス作画、
まったり展開と超速展開、朝アニメと深夜アニメ、
全国ネットとU局ネット、完結主義と継続主義、
あらゆる要素がこの三作品からは抜き出せる。
ということで――。
つまりは三作品揃って07年の1位ってのが正解なのか!!
意外と正しい答えを導いたんじゃないのかな、今回のランキングは!!
そうだ、きっとそうに違いない……!!
…………。
すいません、来年があったらちょっと仕組みを考え直しますんで。

総評の総評

いやもう、本当に驚いた。
しかし、あの三作品に優劣がつかなかったのは
個人的にはちょっと嬉しかったりもするんだよなぁ。
どれも近年稀に見るほど楽しませてもらったから。
それにしてもこの結果からも見えるように、07年作品は本当に
ハイレベルで拮抗し、それゆえに突出するものがないという
充実しているのか閉塞しているのか良くわからない状態になっていた。
地味な佳作が淘汰されてしまう格差状態は好ましくはないのだが、
一方でこれだけ多種多様な作品がこれだけのクオリティーで
一斉に世に出るというのも、その格差による競争激化がなければ
あり得なかったわけで、一概に否定して済む話でもない。
また、若さを感じさせる作品が随分増えたという印象もある。
監督だけ取っても、今石洋之・山本寛・礒光雄・大沼心は
今回がTVアニメ初監督なのだ。山本寛はその域に達しなかったけど、
それにしたってこれほどの実力派が同時にTV監督デビューして、
その年の代表作になるほどのものを作り上げてしまうことなんて、
たぶん10年に一度あるかないかくらいの出来事なのではないか?
谷口悟朗・水島努・神山健治などにしても、
いよいよ脂が乗ってきた若手成長株くらいのポジションなわけで、
これはもう恐るべき才能の共演と言っていい。
一般スタッフまで含めると二十代・三十代の活躍は枚挙に暇がない。
つまり07年の拮抗状態は、確かに制度的な問題、
特にTVの地位低下とネット&CSの台頭という状況に振り回されて
プロデュースサイドが混乱をきたしているということもあるが、
それ以上に全天を綺羅星が覆い尽くして空が見えないという
群雄割拠が招いた幸福な修羅場なのではないか?
放送自粛問題やファンサブ・違法アップロード問題、
著作権を巡る駆け引き、続編シリーズものの増加など、
アニメを取り巻く現状はかつてないほど厳しく、
未来も楽観視は出来ないように見える。
しかし、それでも期待してしまう。
こんな逆境のなかだからこそ、新しい何かが生まれてくるのだと。
才能はある。環境も整いつつある。逆風は望むところ。
そして、ファンは踊りの練習をすっかり終えて準備万端。
そろそろ何かきても良いんじゃないかなー。08年……!!