2006年TVアニメ感想総評
結果発表

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まずは21位から13位までを一気に発表。
何でそんな中途半端な順位なのかと言うと、
それは勿論、毎年恒例、同点が多発しているからです……。
ちなみに同点順位は、上位ではなく下位順位に合わせます。
たとえば3位相当の作品が三つあった場合は、
同点3位ではなく3〜5位ということで同点5位。
そうしないと最高点が複数出た場合1位が大量に出てしまうので。

同点21位 ノエインもうひとりの君へ(10点)
同点21位 ゼロの使い魔(10点)

同点19位 うえきの法則(12点)
同点19位 怪〜AYAKASHI〜(12点)

17位 いぬかみっ!(13点)

同点16位 Fate/stay night(14点)
同点16位 Solty Rei(14点)

14位 甲虫王者ムシキング〜森の民の伝説〜(15点)

同点13位 ゾイドジェネシス(16点)
同点13位 ストロベリー・パニック(16点)

カオスな顔触れが並んだなぁ……。
まず同点21位の二つ。
どちらも作画演出と萌えでトップを取っただけなのだが、
そのインパクトは10点では足りないだけのものがあった。
とにかく、一芸にとことん秀でた二作だったという印象。
ノエインは、シナリオ的にも序盤はかなり惹き付けたのだが、
中盤から錯綜し過ぎたうえ、終盤はその吸引力が持たなかったのが残念。
ゼロ使の方はエロ萌えツンデレという視聴者が望んだものは
十二分に満たしたものの、それ以上の部分に踏め込めず、
原作シナリオの再現もままならなかった。
第二期が決定したようなので、今度はそっちの強化に期待。

同点19位の二つは……何でこれが並ぶかな。
うえきは、半打ち切りを食らった原作をそれでも忠実に再現し、
作画演出と声優のパワーで完成度を底上げしていくという
強引なまでの作り込みが見事だった。
音響監督を務めた井上和彦のツテなのか、
超豪華声優陣が揃い踏みしていたのも楽しかったなー。
怪は、四谷怪談と天守物語の不発を化猫が挽回するという形になったが、
不発だった方も目指した方向性自体は興味深いものがあった。
こちらはもっと作り込む時間があればまた違ったかも知れない。

単独17位はいぬかみっ!。
とにかくマッチョばかりが印象に残っているが、
千葉繁まで動員しながらの「うる星やつら」リスペクト精神が
全体に凄くいい活力を与えていたように思う。
「うる星」みたいなお祭り騒ぎをしてやろうという気概が感じられた。
この「お祭り型コンテンツ」というのは06年のキーワードでもある。
惜しむらくは、お祭り型でそれ以上のバケモノが同時期にいたことだ……。

同点16位は、同人出身の作者達による最新作として注目され、
ゲームから広がり06年を代表する一大コンテンツにまで育ったFateと、
GONZO×AICという新たな体制が生み出したソルティ。
Fateは、原作の1シナリオを中心にしながら
他の要素にも色気を出して結局どれも中途半端になってしまった
ストーリー構成に問題があった。
新規ファンには訳がわからず、原作ファンには不評を買うという
最悪の形になってしまっていたのが残念。
とはいえ、DVDの売り上げは絶好調だったので、
ファンは何だかんだ言いながらこのアニメを歓迎してはいたらしい。
他のルートを基にした第二期はないのだろうか……?
あと、タイナカサチと樹海を発掘したことにも感謝。
ソルティレイは、AICらしい美少女バトルと
GONZOらしい爆裂天使的な底抜けアクションが合体して、
どうせ駄作になるだろうという初期の予想を完全に覆して、
GONZOらしさとAICらしさが最高の形で結実した秀作となった。
主演の斎藤桃子と浅野真澄のコンビも魅力的で、
二人のネットラジオ「ソルティレイディオ」も話題を呼んだ。
06年的な現象の一つであったネットラジオブームを
もう一つのアレと共に象徴する存在となった。
個人的には、06年的ツンデレブームに乗った存在として、
ロイさんこと中田譲治のことも思い出される。

14位は筐体ゲームで子供達の間に大ブームを巻き起こした原作を基に、
そのゲームのことなど完全に無視したかのような骨太な作品作りを指向し
視聴者を驚かせ続けたムシキング。
単なる玩具販促番組になりがちなキッズアニメに
カウンターを食らわせるような大人目線の作りは非常に興味深かった。
ただ、肝心の子供にどれだけ受け入れられていたのかは不明。
まあ、これを見続けた子は将来きっといいアニオタ――もとい大人になるはずだ。

同点13位は、何と偶然にも06年坂井久太キャラデザ三部作の二つが揃った。
ゾイドジェネシスは、当初こそ作画やら制作体制への内部不満リークやらで
不穏な空気が漂っていたものの、魅力的なキャラと戦争ドラマの盛り上がりで
後半戦に入る頃にはすっかり独自の道を確立していた。
そして、転機となる沼田誠也作監回&第二ED!!
あれで更に独自路線が加速、レ・ミィ&コトナは作品からも離れて
アイドルユニット化するような事態にまでなった。
ラスト近辺では、ゾイドCGの出来も各段に良くなり、
作品としての完成度は相当高いものになっていた。
……これでゾイドのオモチャが売れてれば完璧だったのに。
ストパニは、これまた当初こそ安いマリみてパロによる
ゆるゆる百合萌えアニメだろうと思われていたのだが、
話が進むにつれて転がり落ちるように各キャラが黒化。
寝取り、レイプ未遂、嫉妬、ヒス起こして部屋破壊、
地球温暖化、記憶喪失などが渦巻く狂気の百合世界に突入することに。
女同士なのに、という基本的な悩みを完全カットして、
延々と女同士の恋愛と情念のぶつかり合いを描いていくというスタイルは、
他のユートピア的百合世界を描く作品とは一線を画していて見応えがあった。
それと、長年タッグを組むことの多い中原麻衣と清水愛が、
この作品のEDでついにやらかしてたのには驚いた。
声優業界ももう何でもアリか。

とまあ下位はこんな感じで、次は同点11位。
三つあるんで、これが9位〜11位までとなり、
結局ベスト10ではなくベスト11になっちゃいました……。

同点11位 ひぐらしのなく頃に(18点)

同点11位 うたわれるもの(18点)

同点11位 闘牌伝説アカギ(18点)

坂井久太キャラデザ三部作、他より頭一つ抜け出してひぐらしは同点11位。
Fateの前身となった月姫と同じく同人ゲーム原作という背景を持ち、
原作ゲームはジャンルを超え06年ベスト作品と推す声も多い。
メディアミックスも盛んに行なわれ、各種マンガ版の評価も上々。
しかし、肝心のこのアニメ版の評価は最後の最後まで安定しなかった。
不満の大きな理由は、シナリオ圧縮し過ぎという点。
確かに長大なゲームノベルである原作の一編を、
アニメ四話程度に次々収めていくというスタイルには無理があった印象。
原作の魅力であるのだろう、先の展開をあれこれ予想するような楽しみを
新規ファンが持つことも難しかった。
しかし、それでいてなお、この作品には魅力があった。
声優の名演・怪演の数々、精神を揺さぶる音楽、
児童虐待? だから何? と言わんばかりの直接的作画表現、
どれもアニメでのみ可能な挑戦に溢れていて、
原作再現部分は失敗したが、原作拡大部分は成功したといっていいと思う。
ただ、それでもやはり詰めの甘い部分は多々あったので、
決定したという第二期ではその辺、詰め直してくれると嬉しい。

06年、ラノベと共に原作を大量提供したPCゲーム、
そこからの大本命作うたわれるものが期待以上の完成度を見せて同点11位。
……って、あの完成度でひぐらしと同じ順位ってのもおかしいか。
とにかくうたわれは、Fate&ひぐらしと違って
原作ファンの不満がほとんど聞かれなかったのが印象的。
声優変更で揺れたおとボク、作画崩壊&シナリオ変更の夜明けな、
そっちルートで終わるのかよとファンを驚愕させたCanvas2などと比べれば、
それがどれだけ幸福な事態だったのかが良くわかる。
作画演出の丁寧さもさることながら、原作展開に可能な限り寄り添い、
ファン心理に細心の注意を払う気遣いが上手くいったのだと思う。
声優陣の魅力も人気を後押しし、「うたわれるものらじお」では
今まであまり表に出なかった柚木涼香のキャラが爆発、一躍時の人に。
発売日が遅れたものの、PS2に移植されたゲーム版は10万本突破、
BOX仕様の高額DVDの売り上げも好調と、
メディアミックスとしては06年でも屈指の成功作だった。

そして、マンガ原作作品を新たな地平へと誘ったアカギも同点11位。
正直、これが11位までくるとは思わなかった……。
しかし世間での評判が驚くほど高かったりと、
むしろアニメファンより一般人の方が素直にこの作品を受け入れたらしい。
セリフの応酬、声優陣のハジケた演技、暴走する演出、
どれも素晴らしかったが、そもそもにしてあの原作絵を
アニメに置き換えるというキャラデザをはじめとした初期設定が凄かった。
アニメージュに載ってたアカギの顔をいかに回転させるかを解説した
設定画の存在には本気で驚愕。回せるんだよなぁ、あれを……。
あと、OPでのアオリや独特の墨絵風第二EDなど、
端々にマッドハウスここにありといった技術が感じられたのも良かった。
この作品のテイストは今はデスノートに受け継がれている感じだなー。

ようやくここまできました。
ここから本格的にベスト8の発表です。
まずは第8位――。

8位 おねがいマイメロディ(22点)

サンリオに怒られなければイイナ!!
というわけでマイメロ第一期が8位。
けど、今思い返すと第一話の時点ではよくあるキャラアニメで
特に引っ掛かる点もなかったんだよなぁ。
転機となったのはやはりマイメロスポンジ、そして女装サッカー。
あの辺りから何かが壊れ始め、あれよあれよとおかしなことに……。
本当に、サンリオはこれ怒らないんだろうかと不思議だったのだが、
その後のクロミプッシュなど考えると、むしろ乗り気らしい……。
また、展開や演出だけでなく、声優の魅力もなかなか大きかった。
特にバク役の前田登のハマり具合は見事。
個人的には佐久間レイがこんな形で代表作に辿り着くとは
あまりに意外だったなぁ。
ラスト近辺であまりにもやり過ぎた為、
第二期「くるくるシャッフル」では失速も心配されたが、
そちらも後半に入って持ち直しているのでもう一暴れして欲しいところ。

では次、第7位――。

7位 桜蘭高校ホスト部(23点)

監督:五十嵐卓哉、脚本構成:榎戸洋司、
このコンビで面白くならないはずはないと思われたが、
想像以上に面白さ、そして予想外のオーソドックスさで、
マニアなファンだけでなく広い層に支持を受けた桜蘭ホスト部が7位。
このスタッフとこの設定、もっとマニアックになるかとも危惧したのだが、
れんげネタ以外は本当に王道を行く作りになっていて、
とにかく観ていて不安になるような部分が微塵もなかった。
ウテナの様式美を、奇面組に取り入れたような凄いバランスだったなー。
また、06年一つのムーブメントであった
少女マンガ原作アニメの一角を担った作品としても記憶されるべき存在。
そしてもう一つ、男性向けハーレムものにおいては、
女装ブームというのが巻き起こった06年であったが、
この作品の「男装少女の周りをイケメンが囲む逆ハーレム」という構図は
それに見事に対応しているようで深く考察していくと面白い。
ハルヒと男キャラとの関係が、恋愛ではなく友情をメインにしているのも
重要なポイント。逆ハーレムというよりは、女だって男として
やおいの輪に入りたいという願望の現れなのか……?
男は女装し百合に沈み、女は男装しやおいに興じる。
一体どんな時代なんだ、現代は……。
あと、「ハルヒ」という名前には何か言霊でもあったのだろーか……?

そして、第6位の発表――。

6位 ゼーガペイン(24点)

サンライズ×伊東岳彦に監督としてセイバーJや藍青の
下田正美を加えた独特の体制によるロボットアニメ、ゼーガペインが6位。
個人的にはもっと上に行ってもらいたかったなぁ……。
CGロボ戦闘の出来の悪さや、地味目のキャラデザ、
日常が実は虚構だったという初期設定の既視感など、
初期のマイナス要素が大きかったのが勿体なかった。
話が進むにつれ凡庸と思われた設定は二転三転、
キャラの魅力は深まっていき、最終的にはCGの出来も水準以上まで高まった。
新人だった主演二人の瑞々しい演技にも好感。
しかしこの作品の最大の評価点は、
06年という時代に夕方枠でこういうジュブナイル色の強い
ロボットものを敢えて打ち出してきたという企画の姿勢そのものだと思う。
今実際に若者をやってる層への受けはそれほどでもなかったが、
夕方枠の青春ロボットアニメというものに
ノスタルジックな感傷を持つ人間は多数いるわけで、
そういう層に対する訴求力は相当なものがあった。
それが上手く商業的成功に結び付いていかなかったのは残念だが。
DVD、もうちょっと売れても良さそうなものだけどなぁ……。

それでは、いよいよトップ5に突入。
第5位は――。

5位 蟲師(25点)

すでに05年の時点で絶賛、06年前半に大抵の評価は済んでしまったので、
今更語るべき部分もそんなにないのだが、それでもこの作品を抜きにして
06年のTVアニメを総括するわけにもいかない。
空前絶後の作画クオリティとそれに支えられた幻想的な演出、
全体を貫くセンスの良さは、原作への最大限のリスペクトと共に、
アニメスタッフのこだわりと意識の高さが生み出した一種の奇蹟。
日本アニメの最高レベルは、今ここなのだと明確に指し示す完成度だった。
何より凄いのは、これが映画でもOVAでもなくTVアニメ、
しかも2クール放送作品だったということだ。
地上波では残念ながら途中までしか放送されなかったが、
それでも充分驚異的。やれば出来るんだよなぁ、そういうことが……。
また、これが長濱博史監督の初監督作品であることにも改めて驚く。
大地丙太郎作品で抜きん出た演出力を見せていたとはいえ、
まさかここまでやるとは……。次回作にも期待。

続いて第4位――。

4位 舞−乙HiME(33点)

05年ランキングで1位に輝いた舞−HiMEの続編が4位。
キャラを役者として継続させ、短いスパンで設定完全変更の続編を
発表するという舞−HiMEプロジェクトは、
この作品によってまさに完成を見た。
あの短い準備期間で、完成度だけならば前作以上のものを
きっちり仕上げきってきたスタッフワークの的確さには恐れ入る。
他と比べて制作スケジュール管理がずば抜けて良かったという話もあるし、
やはりこれはチームの勝利というものなのだろうなー。
ただ、別惑星を舞台に国家間の戦争や指導者の責任というものを描いた
ストーリー展開は、テーマが難解なうえ視聴者のリアルな感覚とは
少し離れていて、前作ほど感情を揺さぶるドラマにならなかったのは残念。
後半続々出てきた魅力的な新キャラに出番が与えられなかったり、
あまりにも増え過ぎたキャラの処理に四苦八苦していたのも勿体なかった。
それでも最終回の処理は神懸り的なものを感じたが……。
また、これだけウジャウジャ人気女性声優が揃っているなかで、
特撮から転身し主役を果たした菊地美香の好演は印象的だった。
相手役の小清水亜美、主題歌も務めた栗林みな実も良かったが、
脇で一番活き活きしてたのはやっぱりトモエ役の田中理恵。
田中理恵はトモエと水銀燈を経て完全に怖い女演技を習得、
それをリアルな女性演技として働きマンに繋げるという
ウルトラCをかましていて驚いた……。

いよいよベスト3に突入。
まずは第3位――。

3位 simoun−シムーン−(36点)

不遇の傑作、と筆者は考える。
視聴率が0%台、DVDが売れない、用語が訳わからん、
百合アニメかと思ったら敵兵の指切り落としたり
妹が姉に夜這い仕掛けて近親相姦だったり
可愛い巫女少女が凄い顔して自爆テロしたり
マリみてでいえば薔薇様な人が延々ひきこもっていたり、
とにかくもうロクなことが起こらない。
しかし前半戦が終わろうかというところまで耐えて見続けると、
もうこの世界から抜け出せない。頭の中がリ・マージョン。
アウリーガとサジェッタがパルを組んでテンプスパティウムの為に
祈りを捧げるのよ、とか普通に理解出来るようになっている。
不親切な入り口を努力して潜り抜けた先にあるのは、
重厚かつ独特の魅力を放つ世界観と、
口当たりがいいだけではない生々しさを含んだ少女達による
切実な青春のドラマ。そして、少女だけには留まらない
全ての人に対する「社会性との向き合い方」というテーマ。
女しか生まれず、男達も昔は少女だったという特異な設定が、
まさか自分が何者になるのかという成長主題と
ここまで相性良く噛み合うとは思ってもみなかった。
ストーリーは最後まで難解で、決して万人受けはしない作品だが、
それでもこういう作品がたまにTVアニメとして
生まれるという状況は凄く幸せなことだと思う。

そして第2位――。

2位 交響詩篇エウレカセブン(39点)

監督:京田知己、脚本構成:佐藤大、キャラデザ:吉田健一、
制作:BONES、放送:MBS朝枠という布陣で、
アニメファンの過剰とも言える期待を背負って始まった作品。
初期から中盤にかけては、完成度の高さは申し分ないものの、
その過剰な期待からか展開に対する不満が鬱屈し
評判はそれほど良くはなかった。
だが後半に行くに従って、徐々にその鬱屈を抜け出し、
最終的にはなかなか気持ちのいいところに落ち着いてみせた。
基本的なレベルの高さと、どこか歪みを抱えた不恰好さが同居する、
それがこのエウレカセブンという作品だと思う。
何か出来のいい優等生が本当に自分がやりたいことは何なのかと
自問自答して無茶して暴れて迷惑かけて、
それでも優等生はやっぱり優等生で、
見事に自力で答えに辿り着きました……みたいな感じ。
一年間の放送中、これだけドタバタと雰囲気の変わる作品もそうはない。
その辺り、青春の空騒ぎといった感覚を思い起こさせる。
未熟で恥ずかしくて決して人に好かれるものではないのだが、
それでもやはり重要で、終わってみれば懐かしく暖かい。そんな作品。
ただ、その恥ずかしさや空騒ぎさにもっともっと極端さがあれば、
第二のエヴァにもなれたはずで、そこまでは行けないのが
やっぱり優等生なんだよなぁ……。

それでは!!
いよいよ第1位の発表です――!!

1位 涼宮ハルヒの憂鬱
            (47点)

……誰ですか、「やっぱりね」とか言ってる人は。
いや、筆者も言ったけども。
まあ、06年でこれが1位にならないというのは、
そっちの方があり得ないのでそりゃそーだろーなーとしか言い様がない。
個別ランキングを見ればわかるが、各要素でこの作品の上をいくものはあった。
それでもこの作品が他と別格のパワーを感じさせるのは、
とにもかくにも純オタク向けと言っていいアニメ発で
世間を騒がせるだけの「祭り」を引き起こしたという、
その圧倒的な痛快さにある。
しかしこれは唐突に訪れたものでも、偶然にやってきたものでもない。
まず、フルメタ・AIRなどで充分にアニメファンの間に
認知が広がっていた京アニ崇拝意識というものがあったこと、
次に製作者側がそれをわかった上で、ファンを気持ち良く
引っ掛けてやろうという悪戯心と計算高さに溢れていたこと。
この構図は、やはりガイナックス崇拝が高まっていたところに
ネタを次々投下して爆発を狙ったエヴァに似ている。
ただ、涼宮ハルヒが特異だったのは、
それを本当に「お祭り」だけに収めようとしたところだと思う。
普通もうちょっと色気を出したりスタッフ側の熱意が溢れ出して
あまり美しくない要素を垣間見せたりもするものなのだが、
この作品に関してはそういう瑕のようなものが一切ない。
恐ろしいほどに綺麗。不自然なほどに完璧。
1クールで熱が高まり切る前に終わったというのも良かったのかも知れない。
結果、上手いことファンの興味は作品そのものから原作やグッズへと拡大し、
未だ祭りの余韻は冷めきっていない。
これは回転速度が速い現在のアニメ界ではかなり珍しい事態。
Web2.0、ラノベ、ツンデレ、YouTube、
様々な06年的事象を巻き込みながら突き進んだ涼宮ハルヒのパワーは
まだ衰えてはいないのだ。
これが07年に、またもや07年的な事象を引きつれて
更なる大旋風を巻き起こすのか否か。興味深く見守りたい。

総評の総評

作品数の増加によって、やはり票は割れた。
ブームとしてはSEED、ハガレン以上だったと思われる涼宮ハルヒだが、
残念ながら50点超えはならなかった。
06年は本当に、全体のレベルが極めて高く、
それによってほんの僅かな差しかないのに
売れる作品と売れない作品が明確に分かれてしまうという
ファンとしては非常に複雑な状況も生まれていた。
良い作品が売れていない姿を見るのはツラい……。
現実的にも、多くの実験的作品を生み出し続けていてくれた
GONZOの母体であるGDHが大幅赤字を出し、
今後オリジナル作品への出資を控えるという発表があったりと
暗いニュースも多かった。マルドゥック・スクランブルは
久々の大型OVA企画だったのになぁ……。
他にも、代々木アニメーション学院の親会社が破産申し立てをしたり、
アニメ・萌え系関連株が軒並み下げていたり、
フジがワンピースを移動させゴールデンアニメ枠を撤廃したり、
テレ東ですら夕方アニメ枠を改変してアニメへの依存度を下げたりと、
いよいよもってアニメバブル崩壊が見えてきた06年でもあった……。
07年春の段階では、まだアニメ本数の下げ傾向は見られないが、
今後はさすがにTV放送枠を今までのように押さえるのは
難しくなってくると思われる。
そこで、やはり06年から本格化しているネット配信が注目される。

いろはにほへと、FLAGのようなネット限定配信というパターン、
CS放送とネット放送を同時に行なうMUSASHIのようなパターン、
地上波で規制版、ネットで無規制版を放送する
ウィッチブレイドのようなパターン、
OVAを先行放送するリーンの翼のようなパターンなど、
06年は様々なネット配信の形が実験されたが、
まだこれという答えは出ていない。
課金するのか無料でやるのか、YouTubeなどへの拡散には
どう対処していくのか、まだまだ問題は山積している。
それでも時間は待ってくれない、ぼやぼやしていると
地上波デジタルという黒船もやってきてしまう。
ハイビジョン時代に対応出来るスタジオがどれだけあるのか、
また対応出来ないところはどう生き残りを計るのか。
ハルヒの祭りで浮かれる一方、何だか大変な時代に突入してもいるアニメ界、
一体どこがどう動いていくのか、観ている方が気が抜けない。

…………それと、さっさとPCのスペックを上げて、
TVもCSやハイビジョンを観られるようにしないと
もう「TVアニメ感想総評」なんて成立しない時代にもなってるよなぁ。
もう、TVだけではTVアニメは観られない……!!