赤マルジャンプSPRING感想
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表紙

・CDの宣伝してるだけの作品が表紙を飾るとはこれ如何に?

ALL THE WAY DOWN

・森田まさのり、カラー5P閉じ込み読み切り。

☆カラーで5P、という制約を逆手に取って、
余計な情報を省きドラマを凝縮させた作品。
少年向けとは言い難いし、内容自体も比較的ありふれたものだが、
高い画力と確かな構成力で充分読ませる佳作に仕上がっている。
赤マルという雑誌がベテラン作家にとって、
こういう実験の場として機能するのはいいことだと思う。

ゴーウエスト!

・「グラナダ」打ち切り以来の、いとうみきお復活作。

☆ごく普通に能力バトルをしている。
王道……というにもちょっと躊躇われるそのまんまさ。
主人公とライバルが地球を一周して、再会したら決着だ、
という設定は面白いのだが、今回の読み切りでは
その設定があまり活かされていない。
そのせいで、今回の話は長編の中の1エピソードを
抜き出しただけという印象が強く、消化不良を感じさせる。

☆主人公のキャラ立ては悪くない。
ただ、主人公以外が全て類型と没個性と捨てキャラで占められていて、
せっかくの主人公も輝き切れていない。
主人公を引き立てる為にも、敵にはもっとこだわって欲しかった。

窯神

・岩本直輝作品。
2003年夏号「黄金の暁‐GOLEDN DAWN-」以来の登場。

☆まず、絵柄がデビュー作から大幅に変わっている。
恐らくアシスタントをしているのだろう、鈴木信也の影響が多く見て取れる。
前作では地味でごちゃついていた画面が綺麗に整理され、
画力はすでにプロレベルに達している。短期間でのこの成長は素晴らしい。

☆自分の身体を窯にして、様々な能力を持った焼き物を生み出す、
というアイディアは面白いのだが、その焼き物の能力があまりに奔放。
自由な発想でいいとも言えるが、制約がなさ過ぎて何でもアリだと
やはり物語の展開としてご都合主義になってしまう。
今回はそこを、焼き物の能力云々ではなく主人公の心の葛藤という形で
物語を作ることで乗り切っていたが、それが通用するのは一度だけだ。
連載を意識するなら設定に再考が必要だと思う。

爆走妖精ロンタ

・新人、岩渕成太郎作品。

☆えーと、まず作品の完成度で言うなら低くはない。
セリフ回しによるギャグはかなりの高水準。
主力武器をセリフだと明確に定めて、
他をそれを活かす方向で伸ばしていけばいいのではないか。

◆が、それはそれとして。
個人的にこの作品、妙に引っ掛かることが多い。
例えば――何で河原を引っ切り無しに人が歩いているのか?
全然ギャグとして描いている気配がないので、
単純に背景なんだろうけど、描いてておかしいと思わないのか?
一体どういう河原なんだ? 近所で有名な散歩コースなのか?

◆ラーメン屋に入った時、ヤクザが食事しているが
それが話に何も絡んでこない。
普通こういう情報を出したら伏線だと思うじゃないか。
「背景に変なキャラがいる」というギャグなら、こんな大きく描くなよ。
大体ラーメン屋のエピソード自体、本編に何の関係もない。

◆いきなり登場する通り魔。
ギャグ作品で人刺すのはどうなんだろう?
別にひったくり犯とかでも充分話は成立したと思うんだけど。
というかあの服の模様は何? 実は妖精だということを示す
シンボルなのかとずっと思ってたら、何の関係もなくて驚いた。

「捕まえれなかったことで謝るのは、筋違いだろう?」
いや、筋違いじゃないだろ。
人刺して逃げる奴がいる。捕まえてと被害者の友人から頼まれる。
取り逃がす。この流れで友人が怒るのは人として無理ないと思うが。
それに「謝るな」というのは、論理は正しいが非情だ。
このコマ、大きく描いているってことは主人公の正当性を
印象付けようってことなんだろうけど、何か裏目に出ている気がする。

☆全体として、情報の出し方が物凄くおかしい。
下手、というのではなく、おかしい。
深読みするとドツボに嵌まる。これはこれで個性だとすら思う。

本誌連載陣 番外編

・デスノート。
低調。原作者はギャグ向いてない感じだなー。

・いちご。
外と向は未だヒロインの範疇にいないんだろうか?

・銀魂。
本編でやってもあんまり違和感ないと思う。

・ボーボボ。
バイク、一生懸命描いたんだろうな……。

・マンキン。
また訳のわからない展開になってきた……。
えー、たまおがアンナ風に成長したわけ?
つーか花の名前は父親と母親から
一字ずつもらったって言ってなかったっけ?
ところで、次回予告があるってことは、
赤マル次号が出るまで本編は続くということか?

ムヒョとロージーの魔法律相談事務所

・西義之作品。
新人……かと思ったら紹介記事がない。
手塚賞募集のページに「第52回手塚賞準入選」とあるので調べたところ、
どうやら「サバクノオオクジラ」でデビューした「多摩火薬」である模様。
多摩火薬は二人組の共同PNだったらしいので、その片方なのだろう。

◎毒の強い絵柄、特徴的な異形の描写、よく立ったキャラ、
そして魔法律というアイディア、全てが高レベル。
自分の作風をよく理解した上で、技術的にそれを活かす形で
作品をきれいにまとめ上げている。
「魔法」と「幽霊退治」を「法律」で繋げて組み合わせているのは、
ともするとややこしくなってしまうところだが、
構成が上手いおかげで混乱することもない。
恐怖シーンの演出、情報を小出しにする構成、
オチの持って行き方なども実に上手い。

☆ホラーものの定番だからなのか、
ちょっとエッチな描写にも果敢に挑んでいるが、
この絵柄からするとさすがに蛇足だったように思う。
もう少し女の子が可愛く肉感的になれば文句ないんだけどなぁ。

天空の司書

・新人、やまもと明日香作品。
新人賞ではなく、持ち込みからの抜擢。

☆せっかく「物語の中に入れる本」という設定の元、
既知の物語を登場させているのに、作品世界自体がファンタジー調。
なので、現実から本の世界に行くということの不思議さが
読者にいまいち伝わってこない。
現実世界を舞台とした方が設定が活きたのではないだろうか?

☆絵柄は粗く、安定に欠く。
そこに魅力を見出せなくもないが、やはり見にくいのはマイナス点。

新地球人ひゅう

・吉田真作品。
「キンダガーデン」でデビュー後、本誌代原読み切りが一回。
赤マルには2002年夏号以来の再登場。

☆19Pという、赤マルにおいては極めて稀なページ数。
もしかしたら元々は本誌代原用に準備されていたのかも知れない。
内容は、シンプルでありながらキャラ立て、設定説明、
ドラマの機微など必要なことは全てこなしている本格派。
これだけでかなりの構成力が見て取れる。
基本設定が現時点では少し弱いが、そこを練り直して
もっと多いページ数で作り直したらかなりいいものになると思う。

Kick! コータ!!

・青マルジャンプ掲載「福輪術」でデビューした、村瀬克俊作品。

☆どちらかというと淡々として静的だった前作に対して、
極めて動的な「キックボクシング」という題材で勝負に出た本作。
狙い通り……かはわからないが、前作でのイメージを一変させ、
アクション・スポーツ・バトルものでも充分通用する力量を見せている。
画力は充分。35Pで話をまとめている構成力も評価出来る。
あとはキャラの個性、独自の作風を確立すれば連載も見えてくる。

吉野くんの告白

・青マルでの「デス学!!!」が個人的に評価高かった為、
逆にこの早いスパンでの再登場は心配だったが……坂本裕次郎作品。

◎心配は杞憂。前作とは打って変わったギャグ作品だが、
作者の持ち味は充分発揮されている。
ギャグのキレもいいのだが、それ以上に感心したのは
エピソードの繋ぎ方の上手さ。
一見ただのギャグに思えたものが重要な伏線だったり、
読者に先を予想させておいて意外な方向に振ったり、
とにかく展開のさせ方が上手い。

☆一方、作画はデビュー作「キングオアカース」の悪評を完全払拭。
というか払拭し過ぎて今度は薄くなり過ぎているような気も……。
もうちょっと濃く戻しても大丈夫だと思う。

♪しかし今作最大の成長は、萌え女の子が描けるようになったことだ。
この絵でデス学の生徒会長描いたらどうなるんだろう……?

鳥獣奇画

・青マル「歌歌」でデビュー、角石俊輔の二作目。

☆前作で魅力だった独特の絵柄は洗練され、
一方欠点だった構成の悪さは王道を行く少年マンガプロットに乗って
芯の通った気持ちのいい物語で克服されている。
よくある設定、よくある話ながら、エピソードの積み重ねや
感情の描き込みが秀逸で、退屈しない出来になっているのは見事。
ただ、それだけに最後の「おにぎり踏まれてキレる」オチは勿体ない。
あれで積み上げてきた成長エピソードが無意味になってしまった。

スカイフィッシャー楽丸!

・新人、阿部国之作品。

☆釣り、をメインに据えていながら、むしろ作品は
釣りどうこうより世界観を描写することに熱心なように感じる。
キャラや設定は悪くないのに、それを活かし切る物語でないのは残念。
その世界観も、神と人との関係や、今後のあり方など
もっと突っ込めることは色々あるだろうに、描き切れていない印象。
子供殺されて化け物扱いされた上、角ぶっ壊されて終わりでは
海神様が可哀想過ぎる。少しフォローしてあげて欲しかった。

GIMMICK

・2002年夏号「MAP’s」でデビュー、森本尚司作品。

◆オーグレイトッ!!
……いくら何でも影響受け過ぎなんじゃないかとちょっと心配。
まあ、今一番絵の上手い作家の一人なので、真似するのは悪くないが、
あんまりにもそのまんまな絵がいくつかあるのは問題。
それとも、アシやってた時期でもあるんだろうか?

☆義手をアイテムとしたヒーローもの。
アイディアが義手ってだけでは、このプロットでは弱いか。
もっと義手の能力にバリエーションが欲しかった。
気合、だけではさすがに物足りない。

◆あと、仏茶の攻撃受けた時、
一コマ左腕で受けてるんだけど……。

HURL KING

・新人、新井友規作品。

☆好きなマンガ「スラムダンク」、ということで、影響大。
絵柄だけでなく、物語の導入もスラダン第一話から多大な影響を受けている。
が、「ゲームキューブはもう没収だからなぁ!!!」で、
作品の方向性がまるで違うことに気付き安心。そして爆笑。
何ともふざけた展開でありながら、やってることは大真面目。
そのことが生み出す作品の雰囲気が非常に心地いい。

ごっちゃんです!! 完結編

・残念ながら物語途中で打ち切りを食らった「ごっちゃん」の完結編。

☆駆け足ながら、各キャラそれぞれ持ち味を活かし見せ場を作り、
そして驚きのオチへと繋げていく。構成力はさすがの一言。
ラストに仕込まれた純太の未来とか、細かいところで気が利いている。

総評

・あまり好調とは言えないが、そう悪くもない、まあ平均点な号。
積極的に「この設定のまま本誌に来て欲しい」と思わせるような作品が
なかったのは事実で、その点は残念。
「ムヒョとロージー」はもう一つ二つキャッチーな要素が加われば
充分本誌にもいけそうではある。
坂本裕次郎はギャグ路線でいくのかシリアス路線でいくのか、どっちなんだ?
両方組み合わせられる作品を生み出せればベストだろうが。