赤マルジャンプSUMMER感想
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しーもんきー

・予告では「テイルインポッシブル」というタイトルだったのだが、
どうやら急遽変更になったらしい。叶恭弘、読み切り。

☆結論から言って、タイトル変更は大正解。
適度に気の抜けたぬる〜いラブコメ作品となっている。
ヒロインが美少女にしか見えない猿、というアイディアだけで
成り立っている作品で、他の要素は正直どうでもいい。
「プリフェ」以来の叶恭弘が描く美少女――と素直に呼べない
美少女キャラを愛で、その尻に興奮するのが正しい読み方。

☆一つ面白いと思ったのは、主人公が欲望に忠実なタイプなこと。
最近のラブコメは「お前、何か修行でもしてんのか?」ってくらい
奥手を通り越した禁欲的な主人公が多いんで、読んでて気持ちよかった。

あかねの末

・「あかねの纏」でデビュー。青マルではストキンネーム部門受賞作の
作画担当として抜擢されるなど、最近活躍の目立つ落合沙戸作品。

☆タイトルからして「あかねの纏」と何か関連があるのかと思ったら、
全然関係なかった。単に主人公の名前を使い回しただけなのか?
幕末を舞台に、伝説の古流剣法が炸裂するというよくある設定だが、
主人公がアメリカ帰りで自身を「俺はサムライじゃない」と
定義しているところが面白い。そういうことを言っている奴が、
客観的には理想のサムライであるというのが、この作品の要。
幕末という舞台とこの仕掛けがリンクしているのは上手い。
ただ、それが作品の単純な楽しさにまったく繋がっていないのが惜しい。

☆「いのちやどりしは」を経たこともあってか、画力は順調に増している。
ただし、上手くなった弊害か、難しい構図に挑もうという意欲が
暴走してしまったらしく、コマごとにコロコロ構図が変わって
読みにくいことこの上ない。特殊な構図を決めゴマだけに限定すれば
相当読みやすく、作品のレベルも上がっただろうと思う。残念。

冒険王

・本誌に「ハッピー神社コマ太」を発表した、後藤竜児の新作。

☆変な転校生ネタはいい加減食傷気味なので、どうかと思ったが、
中盤からエンジンが掛かってきて、最後にはかなりの勢いを見せてきた。
ただこれ、主人公の冒険王のキャラでなく、ツッコミであるはずの
ケンジが弄られることで生じた勢いなんだよな……そこで評価に迷う。
こういう作品で、主人公が他のキャラに食われるのはマズいだろうと。
キャラにしてもネタにしても、もう一歩足りない印象。

Woodmanザッパー

・2月期十二傑賞受賞、鬼団子作品。

☆全てにおいて発展途上ではあるが、作画・構成・演出など、
見るべきところは多い。変わったことをやってやろうという向上心を感じる。
そして、それらの試みは四、五割方ほどだが成功させてもいる。
あとは詰めの問題なのではないか。きっかけ次第で化ける可能性大。

☆シナリオ上の最大の突っ込み所は、最老樹の養分を吸って
成長するなんてことが出来るなら、誰かさっさと思い付けよということだろう。
好意的に解釈すると、ザッパーのような強い意志がなければ
養分を吸い取るような活力ある行動は取れない、といったところか……。
どっちにしろ、ここの説明不足は痛かった。

本誌連載陣 番外編

☆まず銀魂。
銀八先生再び。これこのままシリーズ化しそうな勢いだな。
もしそうなったら、赤マルの安定した戦力になりそうだ。

♪デスノート。
ミサの白水着!! そして靴下フェチのL!!
ああよかった。Lが変態で本当によかった。

☆いちご。
恐ろしいほどにいつも通り。
映研が舞台だったんで仕方ないけど、
西や南も出して欲しかったなー。

☆ボーボボ。
これ本当に、本編の一ギャグとして載ってりゃ
それで済むような話だな……。

◎で、マンキンの連載。
ああそうか、つまりは最終回で描かれるような
エピローグを先取りして描いていたわけなんだな。
あの中華ヒゲは蓮なのか、やっぱり親父似なんだな……。

ニライカナイより

・本誌に掲載された「URA BEAT」でデビュー、田中隆平新作。

☆一夏の不思議な冒険の話。
ジュブナイル、って感じでこういうのもアリといえばアリ。
ただ、連載への発展性という点では疑問だし、読み切りとしての
完成度を考えるならちょっとネタとオチが弱いかなと思う。
冒険なら冒険、恋愛なら恋愛、遺跡の謎なら遺跡の謎と、
どれか一つでもいいからもっと徹底的にやって欲しかった。
全てが中途半端になっちゃってて、勿体ない。

☆作画は「URA BEAT」から成長していて安心。
特に女の子の表情は劇的によくなっている。
基本的に構成力のある人だと思うので、この画力の成長は頼もしい。

魔人探偵脳噛ネウロ

・3月期十二傑賞準入選、松井優征作品。
現在は「ボーボボ」のアシスタントをしている模様。

◎とにかく個性的。単に絵のインパクトだけでなく、
キャラ立てのよさ、構図の取り方、演出の妙なども相当のレベル。
トリックに多少の突っ込み所はあるが、推理ものとしても充分及第点。
普通、こういう作品の場合、推理要素とホラー要素が分裂してしまうのだが、
この作品はバランスが非常によくとれている。
推理部分が陳腐だとホラーも引き立たないし、ホラー要素がなければ
このトリック、犯人の動機では押し切れない。

☆そして、これは「ボーボボ」のアシをしているからなのだろうか、
これだけ陰惨なネタにもかかわらず、妙に無邪気な明るさがあるのが面白い。
この絵でこのネタなら、作品は果てしなく陰惨になって
そこにこそ面白さが生まれるというのが自然だと思うのだが、
この作品、不思議とギャグっぽい雰囲気が邪魔になっていない。
本当に、バランスが絶妙。

狗童−KUDOH−

・青マル掲載、ストキンマンガ部門準キング受賞
「みえるひと」でデビュー、岩代俊明の新作。

☆前作の長所であった「読みやすさ」は損なわれず、
一方で短所であった話のスケールの小ささや冗長さは改善されている。
ちょっと武井宏之っぽさが入った作画もすっかりプロ級になっており、
つまりは作画・構成にまったく不安がない。デビュー二作目とは思えない安定度。
ただ、肝心の内容が「崩壊した世界」で「昔は弱虫だった」「妖怪少年」が、
「故郷を襲った敵」を「圧倒的パワーでぶっ倒す」というもので、
新鮮味がまるでないのが残念極まりない。
一つ一つの演出、エピソードの繋ぎ方が上手いので
読んでいてそれほどありきたりな感じはしないのだが、
だからこそもっと新味のあるネタであったなら
どれほどのものになっただろうかと考えてしまう。
このまま連載しても充分通用しそうではあるが、ともかく次回作に期待。

味覚師ツムジ

・原作:宇水語、作画:佐藤雅史。
作画担当の佐藤雅史は、「遊戯王」の元アシとのこと。

☆いきなり味王が出てきて笑った。
いくら何でも料理ものでここまでそのまんまなキャラ出すか……。
「絶対味覚」を持つ少年が料理店の審査をするという話で、
料理人ではなく審査員を主人公にしている点は面白い。
ただそれゆえに、物語上料理云々はあまり関係なくなって、
地図の謎を解けとかそういう方向に行ってしまうのは問題か。
「遊戯王」の元アシらしい作画は決めシーンで本領を発揮しているが、
この題材ならもっとハジケても許されるように思う。
このジャンルは演出でトバす凄いマンガが沢山あるんだから
ヒロイン脱がすにしても更に大胆にやらないと。

アンサンブル

・新人、神海英雄作品。
受賞経歴などがないので、編集会議を突破しての掲載か。

◎絵は荒い。特に中盤から背景の効果線が恐ろしく荒れる。
ペンタッチに「ダマ」が出来ちゃってるので、
効果線にはGペンでなく丸ペン使うとか、
せめて定規使うとかした方がよかったのではないだろうか?
だがしかし、そんなことは些細なことなのだ。
この作品は魅力的だ。基本的な絵柄の好感度が高いのがまずあり、
次に吹奏楽部という舞台と題材が非常に面白い。
そして、人間ドラマがちゃんと作られている。
重要な場面での演出がことごとく上手い。画力がこれなのに
演出が出来ているということは、相当にカンがいいのだろう。
簡単に言い替えれば才能があるということ。
こういう場合、一発屋で終わる可能性も高かったりするのだが、
とりあえず次回作は読んでみたい。何か見せてくれそうな予感がある。

♪個人的にこの作品で一番気に入ったのは、その他大勢の女子部員だったりする。
あの後ろでず〜っとキャイキャイやってる様子が凄く楽しい。
吹奏楽部って男女比率が極端そうだから、意外とラブコメなんかに
向いてる舞台なのかも知れないなー。

リアクション!!

・1月期十二傑賞受賞、岩田崇作品。

◎まず、誰でも絵柄で引くと思う。
少年誌は元より、青年誌でも新人でこういう絵柄は今時珍しい。
だが、読んでみるとこの絵がどんどん魅力的に見えてくる。
描きたい話に描いてある絵がちゃんと合っている、これは大きな武器だ。
さすがにまだまだ読みにくいが、この味を消さず整理がつけば
非常に面白い作風を確立してくれそうな気がする。

☆イジメられっ子であるがゆえに特殊な才能を身に付けた主人公と、
それを見抜いて強引に入部させようとする悪魔的な先輩、
構図はまさに「アイシル」なのだが、まずこの絵柄の問題と、
合気道という題材の問題があって、被っている感じはしない。
合気道の描写は明らかに高校レベルのものではなく、
植芝盛平とか塩田剛三とかそういう達人クラスのものだが、
まあそれはマンガ的なハッタリってことで。
しかし合気道って基本的に試合がないから、
少年マンガの題材としては意外と難しいのかも。

空中図鑑

・「獏」「DEAD/UNDEAD」に続く、田中靖規の三作目。

☆マンガ家の主人公が不思議な石版に触れ、手に入れた能力で
同じ能力を持つ殺人鬼と対決する……という流れなのだが、
それらの要素に関連性がほとんどないので、何だか全てが唐突。
そして説明不足に終わる。それが奇妙な余韻を残してはいるが、
それをどこまで魅力的なものと判断出来るかは、微妙なところ。
どうもアイディアの一つ一つが上手く繋がっていない感じがする。
大体、空中図鑑ってタイトルがよくわかんないし。

☆今回、ヒロインに関して果敢に萌えキャラに挑んだようなのだが、
これもあんまり上手く行ってない。偽物とはいえいきなり脱がすかー。
けどま、そのチャレンジ精神は評価したい。

大石浩二を一匹見かけたら
あと三十匹はいると思え!

・本誌で代原作品などを発表していた大石浩二の新作。

☆四コマに打って出た。
これは英断だと思う。どうも今まではコマの繋ぎが上手くなかったが、
これならばそういうことは気にせずネタにだけ集中することが出来る。
結果、単純過ぎてこれまでは笑えなかったようなネタも、
充分通用するようになっている。
また「オセロ電車」のようなちょっと考えないと
意味がわからないようなネタにも果敢に挑むことが出来る。
今後もこの路線で行くのなら、結構期待が持てそう。

解体心書

・「黄金の暁」「窯神」に続く岩本直輝の三作目。

☆前作では鈴木信也の影響を受けて絵柄がデビュー作から劇的に変わったが、
今回は更に鈴木信也っぽさが抜けて、独自の方向を模索し始めている。
進化速度の恐ろしく速い人だ……。
古代中国を舞台にした心霊治療&カンフーものといった題材で、
設定に目新しさはないのだが、読みやすくわかりやすいので
取っ付きは非常にいい。能力設定自体もよく考えられている。
キャラもエピソードも及第点以上。ただ、及第点以上ではあるが
特に突出したものがあるわけではないのが惜しい。
実力は充分備わってきているので、あとは題材の問題だと思う。
何かいいネタを捕まえてもらいたい。

♪あ、個人的に突出していいなぁと思ったものが一つ。
チャイナヒロインのスリット。

総評

・極端な号。
全ての作品に光るものがあり、読んでいて非常に楽しかった。
しかし欠点もまた多く、本誌連載となると難しい作品がほとんど。
これは恐らく十二傑賞の特色がそのまま現れたのだと思う。
何か一つ光るものを持つ作品は、とりあえずデビューさせる。
そのやり方には疑問の声もあるが、今号を読む限りでは
効果を上げてきているのかな、という気がする。
とにかく次回作が楽しみな作家が多い。これはとてもいいことだ。